研究概要 |
本研究では、最近研究代表者らが発見した(TMTTF)_2SbF_6の圧力下における異常超伝導相の起源を明確化するために、我々が提唱した擬一次元有機導体(TMTCF)_2X(C=Se,S ; X^<-1>: 一価の陰イオン)の庄力相図を実験的により具体化する事を目的とした。(TMTTF)_2,SbF_6は常庄で電荷秩序(T_<co>=K)と反強磁転移(AF : T_N=8K)を示し、約5.5GPaの超高圧力下で超伝導(SC)転移(T_c=2.8K)を示す。^<13>C-NMRの測定では、この物質は低温で圧力印可とともに、基底状態が反強磁性(AF)相→スピンギャップ(SG)相→AF相(整合SDW)と移り変わると報告されている。本研究代表者は、より詳細な圧力下のスピン状態の変化を圧力下磁化率測定よりとらえるため、前年度に引き続き磁化の小さい物質の為の磁化率用圧力発生置の開発・改良を行い、約0.9GPaまでの(TMTTF)_2SbF_6の圧力下磁化率測定を行った。今回はSQUIDから得られたシグナルから圧力セルのバックグラウンドシグナルを差し引くためのプログラムを作成し、精密に解析する事により、信用度の高い結果を得ることができた。その結果、圧力を印可すると、低温で反強磁性転移による磁化率の上昇は抑えられ、圧力増加とともに反強磁性転移温度が減少する事を確認した。圧力下における反強磁性温度の変化は^<13>C-NMR測定による報告と大変よい一致を示した。また、量子臨界点近傍とされる0.6GPa付近で(TMTTF)_2SbF_6の反強磁性が完全に消失し、低温で磁化率が減少する事を確認した。
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