研究概要 |
本研究の代表者の研究室では、高圧下の液体のX線回折測定については既に技術が確立しているので、2009年5月中旬より、液体Sb,Bi,GeS,GeSe,GeTe,およびGe15Te85について、構造の圧力依存性を高エネルギー研究所のPF-ARに設置の装置MAX80によって調べた。液体Biについては、3GPaという比較的低圧域において、結合長が圧力に対して伸長から収縮に転ずることを、明瞭に初めて示したほか、静的構造因子が微小ではあるが不連続に変化する圧力・温度領域を見出した。液体Sbについては、常圧で既にパイエルス歪が解消していることがこれまで提唱されてきたが、構造の圧力変化からは、このような説とは異なり明らかに歪んでいることを明瞭に示すことができた。これらの研究がら総合して、液体における「パイエルス歪」と「中距離秩序」の関係を、結晶におけるパイエルス歪と長周期変調の関係からの類推で理解できることを提唱した。 また、近年実用的な側面からも注目されている液体Ge15Te85について、常圧で融点直上における液体-液体の相転移がこれまで提唱されていたので、これを圧力-温度相図上で初めてマップし、転移温度領域が圧力に対して負の傾斜を持つことを示すことができた。 同時に、研究協力者の支援によって新しく小角散乱装置の設計を行い、SPring-8のBL10XUに設置の装置を用い、様々な圧媒体を用いて高圧実験を行った。グラファイトやBNの他に耐熱性シリコーンが350℃以下では圧媒体および液体試料のシーリングに良く機能することが分かった。手始めに、溶融ポリマーに関する測定を行い、溶融ポリマー系において初めての圧力誘起構造変化を見出した。
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