研究概要 |
圧力(p)-温度(T)相図において、流体領域に、液体と気体を分ける気液共存線以外に、液体と液体(流体)を分ける線を引きうることが、液体リン(P)について発見された(Katayama, Nature 2000)。本研究の目的は、主にV族および平均V族の液体状態における短距離から中・長距離までの秩序の圧力変化の測定を通して、液体の"パイエルス歪"とその解消とは何かを、液体における構造転移の立場から解明することである。 平成21年度には、我々の研究グループで確立している高圧下の液体のX線回折測定によって、液体Sb, Bi, GeS, GeSe, GeTe,およびGe_<15>Te_<85>について、圧力依存性を測定した。広角のX線回折に加えて、新たに中距離領域(1A-1以下の小角領域)についてX線散乱測定に着手するため、新しい高圧セルを設計した。 平成22年度はこの新しい高圧セルを完成させ、0.1GPa程度という非常に低圧で小角域に変化の期待できる溶融高分子について圧力誘起構造変化の測定を行うことから実験を始めた。その結果、世界で初めて、高分子の圧力誘起液液相転移を発見した(投稿中)。変化は、これまで我々の研究グループでは測定不能な小角領域にあったので、新しい高圧セルによって初めでこのような中距離構造の液体における劇的な変化が観測可能となったものである。また、液体Ge15Te85については、特に3GPa以下の領域について圧力を細かく測定し、液体Ge15Te85の圧力誘起構造変化領域が、圧力と共に低温にシフトすることを見出し、近年DVD材料としても注目を集めていたこの構造不規則系の、液体領域における圧力・温度相図を明らかにした。この系の液体領域における構造変化は"Peierls歪み"の解消と解釈でき、結晶における"Peierls歪み"の概念との相違点と類似点を明らかすることができた。
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