研究概要 |
冷却原子気体系においてフラストレーションによりもたらされる新たな量子相の発見とその動的な現象に関して研究を進めている。本年度は以下の内容を明らかにした。 1, 2成分ボースアインシュタイン凝縮体に存在する2つの半量子化渦の間の相互作用に関して,その解析解の漸近形を導出した。通常の1成分の量子渦間に働く力はその相対距離をRとすると,R^<-1>に比例するが,2成分の場合は1n R/R^3のように変化する事を明らかにした。 2,回転する光格子によって生じる量子渦の形成のダイナミクスを、Gross-Pitaevskii方程式の数値計算によって明らかにした。これに関して,Oxford大学の実験結果と詳細な比較検討を行った。結果,実験で観測された平衡状態の渦数の回転振動数依存性は,光格子を作るレーザービーム強度のガウス分布が大きな影響を与えている事が明らかになった。また,最初に渦ができる臨界回転振動数は実験と矛盾しており,今後の課題としてこれを説明する新しいモデルを検討する必要がある事が分かった。 3,有効磁場中の光格子ポテンシャルに閉じ込められたハードコアボソンの基底状態の相図をCP1模型のモンテカルロシミュレーションにより調べた。この模型は各サイトの粒子数の揺らぎを取り入れることができ,以前から解析されているフラストレーションをもつXY模型をより現実的に近づけた模型といえる。今年度は有限温度における相図の磁場強度依存性を調べた。結果、粒子数揺らぎの効果は小さく、有限温度の相転移の性質は、そのユニバーサリティクラスを含めて位相のみを考慮したXY模型の性質に従う事を明らかにした。
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