本研究ではウランを含む新しい強磁性超伝導体UCoGeおよびURhGeにおいて核磁気共鳴(NMR)測定法による微視的研究を行っている。研究対象となるウラン化合物の強磁性超伝導は、遍歴電子が強磁性と超伝導を同時に担うという点において極めてユニークであり、強磁性揺らぎを媒介とした非BCS型の超伝導機構の存在を直感的に示唆している。またこのような遍歴電子の強磁性超伝導は現時点ではウラン化合物でのみ発見されており、複数5f電子系の特異性を示唆している。本研究は微視的観点からその電子状態を探り、最終的に新奇な強磁性と超伝導の微視的共存のメカニズムを明らかにすることを目標としている。 研究の初年度となる平成21年度は複数のUCoGe試料においてゼロ磁場のCo核のNQR測定を行った。UCoGeでは低温で常磁性相と強磁性相が相分離して存在することが指摘されていたが、我々の試料においてもこの相分離が存在することが確認された。さらに試料を変えて測定を行った結果、両相の体積比は試料の合成方法やアニール条件に非常に敏感であり、試料の均一性が向上し、電気抵抗の残留抵抗比が上昇すると共に、強磁性相の割合が増えることがわかった。超伝導の体積率も残留抵抗比の上昇とともに増加することが分かっており、このことは超伝導の出現において強磁性相の存在が本質的に重要であることを示している。また今回得られた微視的情報は試料合成にフィードバックされ、現在さらに均一性の高い試料の合成が試みられている。
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