NpPd_5Al_2は重い電子系超伝導体であり、超伝導転移温度は比較的高い。また、大きなパウリ効果を示すことから上部臨界磁場(H_<C2>)近傍での新奇な超伝導混合状態が期待されている。スペクトル測定が容易なc軸磁場方向においてH_<c2>近傍の強磁場(14T)においてNMR測定を行ったところ、核スピン格子緩和時間(1/T_1)が磁場に依存性し、低温において低磁場側で著しく増大することがわかった。1/T_1の磁場依存性を詳細に測定した結果、この著しい磁場依存性は^<237>Np核と^<27>A1核との間の交差緩和によることがわかった。通常の1/T_1は励起した^<27>Al核系が電子系にエネルギーを放出することで緩和する時定数であるのに対して、交差緩和とは励起した^<27>Al核が^<237>Np核スピン系にエネルギーを放出することで緩和する希有な現象である。これは、^<237>Npの存在比が100%であること、比較的大きな核磁気モーメント(γ_n=4.78MHz/T)を持つこと、5f電子の大きな超微細相互作用定数に起因すると考えられる。また、低磁場では交差緩0和による1/T_1への付加的な寄与があるため、強磁場での方が純粋な電子系の1/T_1を測定していることを示している。強磁場での1/T_1の解析を行った結果、常伝導状態のスピン揺らぎは大きな異方性を示し、a軸磁場方向ではスピン揺らぎが著しく押さえられていることがわかった。スピン揺らぎに関する結果はJPSJ 79 053704 (2010)に掲載されている。
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