本研究の対象物質であるNpPd_5Al_2はT_c=5Kの重い電子系超伝導体である。この新しい超伝導体では、強いパウリ常磁性効果を起源とする特異な超伝導混合状態(例:FFLO状態)の可能性が示唆されている。本研究の目的は、NpPd_5Al_2において核磁気共鳴測定法により上部臨界磁場(H_<c2>)付近で生じている超伝導一次転移に伴う特異な超伝導混合状態を同定し、H_<c2>近傍の混合状態のHvsT相図を明らかにすることを目的としている。 本物質における超伝導HvsT相図を明らかにするためには、磁化、比熱の温度、磁場依存性等、多面的に検証する必要があると思われる。NMR測定においてはナイトシフトや1/T_1の測定を温度と磁場をパラメータとして詳細に行う必要があると考えられる。前年度までで、常伝導状態において核スピン格子緩和時間(T_1)の温度依存性と磁場依存性を測定したところ、低磁場で1/T_1が急激に増大し、また低温ほど1/T_1の増大が顕著であることがわかった。この振る舞いはNpO_2やPr化合物において報告されている磁性イオンサイトとリガンドサイト間の交差緩和であると考えられる。本年度は1/T_1の解析を行い、本機構を支配する揺らぎが^<237>Np核揺らぎのz成分であることがわかった。現在この成果についてまとめた論文を執筆中である。
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