研究課題
確率的カットオフ法とWang-Landau法を組み合わせることにより、長距離相互作用である磁気双極子相互作用を含む磁性体において、計算時間を大幅に短縮しつつ、磁化の関数としての自由エネルギーを高精度で測定する方法を開発した。この自由エネルギーのデータから自由エネルギー障壁を求めることにより、ナノ磁性体の熱的安定性を長いタイムスケールに渡って定量的に評価することができる。磁性体の微小化が進むにつれ、いかに微小化と熱的安定性の両立を図るかという問題は今後ますますその重要性を増すと考えられており、その意味において本研究の持つ意味は大きいと言える。また本手法の適用研究として、最初に、狭窄磁性体における厚さ数ナノの磁壁(幾何学的閉じ込め磁壁)の熱的安定性を定量的に評価した。そして、熱的安定性が狭窄磁性体の形状にどのように依存するかを調べ、高い熱的安定性を保つための最適な形状を明らかにした。また、得られた自由エネルギーのデータを用いて、熱揺らぎに由来する電流抵抗ノイズの評価を行った。狭窄磁性体はサイズが小さく、熱揺らぎの影響を強く受けるため、本研究で得られた知見は、狭窄磁性体を実際に磁気ヘッドとして応用する際に大きな役割を果たすものと考えられる。さらにもう1つ適用研究として、コバルト微小磁性体において熱的安定性のサイズ依存性を調べ、直径11ナノメートル以上であれば熱的安定性が保たれるとの結果を得た。このような研究により微細化の限界を明らかにすることは、今後磁性体の微細化を進める上で極めて重要である。
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Journal of Physics : Conference Series 200
ページ: 042022-1-4
ページ: 042016-1-4
Journal of the Magnetics Society of Japan (未定, 印刷中)