実際の化石資料や生態系に見られる特徴的パターンの由来についての統計物理学的理解を得ることが本研究の目的である。このために研究計画通り高速かつ大容量のメモリを有するワークステーションを整備し、異なる種間相互作用モデルの系統的な解析を進めた。これにより、私が提案してきたスケール普遍な種間相互作用に基づくポピュレーションダイナミクス系と、これとは異なる個体ベースの相互作用モデル(tangled-nature model)の間で種の寿命分布に共通の統計性があることが明らかになった。また、この統計性を左右するのは新規侵入種が在来種と相関を持つかどうかという点であることも明確になった。これらの結果を論文:"Random walk in genome space : a key ingredient of intermittent dynamics of community assembly"としてまとめた。 また、これと並行して国内及び海外で成果発表と議論を行った(6/11-6/13台湾大学でワークショップに参加、講演。6/28-7/6WE-Heraeus Summer School 2009 "Steps in Evolution"に参加、講演。8/22-9/7スイス連邦工科大学、ヘルシンキ工科大学、ニールスボーア研究所を訪問し各所でセミナー講演と議論を行った。12/11-12/19 Biocomplex Taiwan 2009にて招待講演)。また、特に2度訪問した台湾では、我々の持つインターネット動画サイトについてのデータと解析結果についての議論から台湾サイトの解析も含めた共同研究を始めた。生態系研究から得てきた、系の相互作用の関数形の詳細に依らない統計性の普遍性についての知見を基に動画サイトにおける統計性について普遍性を解析しつつある。このことから一方ではサイトのサイズや構造、性格、更には社会の違いに起因する個別性を明らかにすることも期待できる。
|