本研究課題の目的は、高密度粉体の非線形レオロジーおよびその微視的機構(粒子ダイナミクス)の解明である。とくに粒子ダイナミクスに関しては新奇な協同現象が観察されている。この協同現象は粉体だけでなく過冷却液体・コロイド・泡など非晶質系一般における構造緩和ダイナミクスにおいて普遍的に観察されているため非常に重要である(「動的不均一性」と呼ばれる)。とくに粉体では協同運動を特徴づける長さスケールと時間スケールがある密度(降伏応力発生点、ジャミング転移点と呼ばれる)で発散することが示唆されているため、臨界現象とのアナロジーにより統一的にレオロジーを記述できる可能性がある。 とくに21年度においてはジャミング転移における粒子ダイナミクスの協同性を特徴づけるために系統的なシミュレーションを行った。まず、協同運動の時間スケールと長さスケールがジャミング転移点へむけてベキ的に増大していくことを確かめ、その指数を数値的に評価した。ここで特筆すべきことは、協同運動の長さスケールと緩和時間を結びつける指数(動的臨界指数)が、過冷却液体系のシミュレーションで知られている値と一致したことである。この事実は、ジャミング転移が過冷却液体などの構造凍結と密接に関係することを示唆している。さらに、粒子の速度相関関数における特性時間(速度緩和時間)を定義し、その時間スケールが臨界現象的なスケーリング則に従うことを発見した。この速度緩和時間は拡散過程のみならずレオロジーも支配する重要な量である。拡散過程が速度緩和時間と粉体温度を用いてスケールされることはもちろん、せん断応力が速度緩和時間の-2乗に比例することが発見された。
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