水と粉粒体の混合液を水平なスライドガラスで挟み乾燥させると、凝集した粉粒体が迷路状のパターンを形成する。 このパターンは水の蒸発のために水-空気界面が系内部に侵入していき、粉粒体が掃き集められることで生じる。 この迷路状パターンの分岐構造を測るため、本研究では、分岐解析という手法を用いた。 分岐解析では次の3つのルールを繰り返し適用し、パターンを構成する各々の枝に対して次数という数を割り当てる:(1)末端の枝は全て1次、(2)同じ次数の枝が合流したら、その先の枝は次数を1つ上げる 、(3)異なる次数の枝が合流したら、その先の枝は大きい方の次数を引き継ぐ。 このとき、次数rの枝の本数をN_r、次数rの枝の平均長L_rをとおくと、多くの分岐パターンにおいて、N_r及びL_rがrのべき乗で表されることが知られている。迷路状パターンの空気領域に分岐解析を行った結果、確かにべき乗の性質が認められ、さらに、分岐解析とパターンのフラクタル次元との関係についても考察を行った。 なお、乾燥後の迷路状パターンはこの他にも、幾つかの特徴的な統計的性質を持ち、さらには形成過程におけるパターンやダイナミクスにも特徴的な性質があることが期待される。 そこで界面運動と相互作用する粉粒体の集団運動のモデルをこの系に適用し、パターン形成過程に注目して調べ、パターン形成時に自己相似フラクタル性が現れることを確認した。 また、これまでのモデルでは、界面運動をphase fieldモデルにより表現し、粉粒体の運動をNewtonの運動方程式により再現を行ってきたが、現在、モデルの中に流体的な相互作用を取り入れる試みを行っている。
|