ドメイン成長現象は乾いた布への水の染み込みといった物理系だけでなく、バクテリアコロニーの成長といった生物系でも観られる普遍約な現象である。このようなドメイン成長は、ドメインの内と外を分ける境界の運動として捉えることができ、一つの定式化として、フェーズ・フィールドモデルがよく用いられる。このモデルにおいては一般に、いま考えている空間の各点に状態変数(Phase field>を定義し、ドメインの内と外で状態変数が異なる値を取るように設定する。 ここで、ドメインの境界は状態変数が急激に変化している領域で表すことができ、境界の運動は空間全体での状態変数の時間発展式(偏微分方程式)で記述される、我々は、境界運動の一例として、2枚の板に挟まれた水が蒸発することに伴う水-空気境界の運動に着目し、先ず、この境界運動がフェーズ・フィールドモデルで再現可能であることを確認した。次に、境界運動にを阻害する効果を考慮するために、水に粉粒体(コーンスターチ)を混合した液体を2枚の板に挟み、乾燥させることによる水-空気境界の運動を観察した。その結果、混合した粉粒体の割合により、境界運動の様子が大きく変わることを確認した。実際、混合した割合が少ないとき、粉粒体は境界の運動に対し、ピンニング(pinning)の効果として働く。徐々に混合の割合を増やしていくと、割合に応じて、(1)反応拡散系で記述可能な領域、(2)迷路状パターンが現れる領域、(3)乾燥破壊領域と分類できることがわかった。 特に、我々は、迷路状パターンが現れる領域に着目し、フェーズ・フィールドモデルに粉粒体の運動方程武を結合したモデルを構築、シミュレーションによる実験結果の再現を行い、得られた結果の統計的性質を調べた。その結果、パターンには自己アフィン性の存在することが明らかになった。
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