研究課題
本研究課題の大きな目標は「磁気多極子、カイラル、ダイマー秩序のような特徴付けしにくい状態を検出する有効な実験方法を提示する」「それらの状態がどのような系で生じ得るかを明らかにする」である。これに関連した本年度の研究成果として以下の4つが挙げられる。(1)マルチフェロイクスLiCu_2O_2の電磁波応答の理論、(2)有機系モット絶縁体の光学伝導度の精密評価、(3)強磁性zigzagスピン鎖の基底状態相図の決定、(4)2成分ボース・フェルミガスの強結合領域強磁性相の理論。これらの中で(1)(2)について以下で説明する。(1)近年、電気分極と磁性が強く結合し、磁気転移と同時に分極が現れる強誘電磁性体(マルチフェロイクス)が次々と発見され精力的に研究されている。磁性と誘電性の静的な関係は微視的に説明されているが、光学応答で検出される磁気励起の理論は開発途上にある。そこで我々は最も単純なマルチフェロイクスとしてスピン1/2のLiCu_2O_2に焦点を当て、その光学応答を解析した。得られた電磁波とNMRスペクトルは実験結果と整合しており、スペクトルピークが磁気励起由来であることを強く示唆している。(2)マルチフェロイクスの研究をきっかけとして、モット絶縁体における光学応答が注目を集めている。光学応答で観測される磁気励起は多くの場合スピン1をもつマグノンであるが、1次元量子磁性体のスピン液体状態では励起がスピン1/2のスピノンで支配されている。そこで我々はパイエルス不安定性をもつ1次元有機系モット絶縁体TTF-BAに着目し、その光学伝導度を共形場理論とForm factorの方法を用いて精密に評価した。その結果、パイエルス転移温度以上ではギャップレスのスピノン対の連続スペクトルが現れ、転移温度以下ではギャップを持つシングレット励起のピークが現れること明らかにした。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (23件) 備考 (1件)
Physical Review Letters 103
ページ: 177402-1-177402-4
Proceedings of the 9th International Symposium on Foundations of Quantum Mechanics in the Light of New Technology-ISQM-TOKYO'08
ページ: 45-48
ページ: 150-153
http://www.riken.jp/lab-www/cond-mat-theory/sato/papers.html