本研究では、量子シャッターの実証実験を目指した。量子シャッターはたった一つのシャッターで重ね合わせ状態にあるすべての光子をはね返すことができる。これは、量子力学の非局所性の新たな側面を明らかにするものである。今年度は、昨年度構築、評価した量子ゲートを組み合わせることで、量子シャッターを構築した。そして、構築した系の評価を行い、量子シャッター動作を示す実験結果を得ることができた。 具体的には、まず、干渉計となっているプローブ光子、シャッター光子の光路の安定化及びその評価を行った。その結果、どちらの干渉計も非常に高い安定性をもっていることを確認した。次に、構築した量子シャッターの動作確認を行った。それにより、入力状態のうち、もつれ合い状態となっている部分状態の位相安定性が重要であることが分かった。そこで、もつれ合い状態の位相の設定方法や、安定化について研究を行った。その結果、量子シャッター動作を示す実験結果を得ることができた。現在、研究成果をまとめているところである。 また上記以外にも、本研究で用いている量子ゲートのエラーについても詳細な解析を行った(New J.Phys.2010)。さらに、本研究で用いている量子ゲートはシンプルである一方、量子シャッター動作に対して一部分でエラーを生じてしまう。我々はそのようなエラーを原理的には完全になくすことができる量子ゲートの構築実験についても行った。
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