光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)出力を真空チャンバー中のアルゴンのセルに集光することで、スペクトルの更なる広帯域化を行った。その結果、OPCPA出力パルスの更なる短パルス化(3.8fs)を実現した。この成果は、高出力(>mJ)パルスでは世界でも例を見ない短パルスであるという、記録としての側面もさることながら、従来のホローコアファイバーを用いたスペクトルの広帯域化法に欠けていたエネルギースケーラビリティを備え、パルス幅10fs以下のレーザーシステムの多くに適用可能な、優れた超短パルス発生法の提案であるという面も併せ持っている。 その後、年度途中の平成22年8月1日付で京都大学へ赴任したため、チタンサファイア増幅器を新たに建設した。チタンサファイア増幅器の出力スペックは、パルスエネルギー14mJ、パルス幅40fs、繰り返し1kHz、パルス毎の安定性は0.3%rmsである。これらの値は、高調波を安定に発生させるのに十分である。更に、高調波パルス発生実験に用いる真空系を完成させた。真空系は、 (1)波長変換チャンバー(チタンサファイア増幅器出力を深紫外域へ波長変換する) (2)高調波発生チャンバー(深紫外パルスを希ガスに集光し高調波を発生させる) (3)高調波分離チャンバー(発生した高調波を元の深紫外基本波と分離する) の3つから構成されており、これらの真空チャンバー内には波長変換用の非線形結晶や高反射鏡が配置されている。今後は、完成したチタンサファイア増幅器、及び高調波パルス発生システムを用いて、実際に高調波パルスを発生させ、その出力評価(パルス幅、パルスエネルギー等)を行う。また更に、高調波パルスによる光電子イメージング測定に向けた装置開発を行うのが、次の展開である。
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