本研究の目的は、群論的手法を駆使して、多体エンタングルメントを特徴付けるmeasureを系統的に生成し、多体エンタングルメントの定量化と分類の理論を発展させることである。平成21年度は、qubit系に関して、エンタングルメントmeasureを計算するのに必要な、局所ユニタリー群(SU(2))のClebsch-Gordan(CG)係数の計算を行った。また、数式処理ソフト(Mathematica)を使って、CG係数が与えられると自動的にエンタングルメントmeasureを計算するプログラムを開発した。さらに、このプログラムを2-qubit系および3-qubit系に適用し、エンタングルメントの完全な分類を行った。2-qubit系と3-qubit系に関しては、エンタングルメントmeasureの完全系は既に知られており、我々の結果はある意味でそれを再現したに過ぎないが、これまでの研究ではエンタングルメントmeasureの作成は発見法的に行われており、我々の研究は、これらの結果を系統的、機械的に再構成できることを示した点に大きな意義がある。また、我々の手法では、2-qubitでは2 copy、3-qubitでは3 copyの状態を用いることで、measureの完全系が得られることが分かった。この結果から、n-qubit系のmeasureの完全系はn copy状態から得られるという予想が考えられるが、今のところ証明はない。さらに、より複雑な多体エンタングルメントの研究の第一歩として、4-qubit系の計算を始めた。我々の手法を使うことで、非常に多くの新しい非自明なmeasureが得られるが、多くのmeasureの代数的独立性をどのように判定するかと、それらの物理的意味をどのように見出すかが課題として残されている。
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