・ 窒素分子のレーザーによるイオン化確率の核間距離依存性を時間依存密度汎関数法(TDDFT)の基礎方程式である時間依存Kohn-Sham方程式を実時間実空間法で解くことでシミュレートを行った。その結果、核間電子効果の低下によるイオン化率の促進が大きく起こることを明らかにした。これまで1電子系での計算しかなかった為、核間距離が基底状態の2倍程度になった時にイオン化が大きく促進されることのみが言われていたが、一般的な多電子系では更に小さい核間距離の変化でも重要であることになり、強いレーザーによる分子の操作、観測における分子変形の重要性を示した。 ・ ダイアモンドのレーザーによる電子励起確率の偏光角度依存性をシミュレートし、結晶のa方向から45度レーザー偏光方向を傾けた時に励起確率が大きくなる事を明らかにした。またこの励起確率の変化はバンド間遷移の起こるブロッホ空間内での場所の変化を伴ったものであり、励起過程そのものも変化している事が分かった。これはレーザーによる透明物質内部の結晶構造のプローブや電子励起の細かなコントロールの可能性を示したものである。 ・ TDDFTによる電子波動関数の時間発展とHellmann-Favnman力によるイオンヘの力の計算からレーザー照射によるダイアモンドのコヒーレントフォノン生成過程のシミュレーションを行った。その結果ラマン活性な方向と平行に偏光したレーザーでコヒーレントフォノンが生成することが分かった。これはこれまでの実験結果とも定性的に一致した結果である。コヒーレントフォノン生成過程の第一原理による初めてのシミュレーションであり、レーザーによる、固体のコヒーレシト制御や構造のプローブに繋がる結果である。
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