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2009 年度 実績報告書

結晶性高分子の隠れた液晶的秩序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21740311
研究機関京都大学

研究代表者

小西 隆士  京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教 (90378878)

キーワード高分子結晶化 / 液晶 / ガラス転移温度 / X線散乱法 / ポリエステル
研究概要

本申請の目的は高分子の結晶化過程について、液晶的な準安定相を経由する過程の存在の有無を明らかにすることである。この目的を達成するために、H21年度はホモポリマーを用いて実験を行った。
いくつかの高分子では溶融状態からの急冷によりガラス転移温度(Tg)付近でスメクチック(Sm)構造が形成される。このSm構造は熱力学的な安定相ではなく、昇温させると結晶相に転移する。申請者はこのSm構造が出現する原因を明らかにするためにポリプチレンテレフタレート(PBT)を用いた実験を行った。ガラス状態のPBTを室温で延伸することによりSm構造が形成されることが知られている。そこで、Sm構造が存在するPBTと存在しないPBTの熱量測定の結果を比較すると、Sm構造のTgはアモルファス相のTgよりも低温に存在することがわかった。そこで、申請者は本来熱力学的に安定でないSm構造が存在できる理由はTgに密接な関係があることを見出した。
さらに、PBTのガラス状態からの結晶化過程について小角X線散乱(SAXS)測定、熱量測定を行った。まず、SAXS測定によりPBTのガラスからの形成される結晶構造は通常現れるラメラ構造を示さず、こぶ状の(nodule)構造が形成されていることを確認した。また、結晶化温度が高くなるにつれ、このnodule構造のサイズが大きくなった。さらに、この結晶サイズと融点の関係から平衡融点を求めると、他の方法で確認されている平衡融点よりも約80度も高かった。そこで、申請者は結晶化及び成長の際に一旦準安定相を経由する結晶モデルを提案し、この奇妙な不一致を説明することに成功した。
これらの結果は結晶性高分子には融点以下で液晶的な準安定相が存在し、結晶化においても重要な役割を担うことを示唆している。尚、これらの成果は原著論文としてまとめて報告し、また、国際会議等でも発表した。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Crystallization of Poly(butylene terephthalate) from the Glass2010

    • 著者名/発表者名
      Takashi Konishi, Yoshihisa Miayamoto
    • 雑誌名

      Macromolecules 43巻

      ページ: 375-383

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Smectic Structure and Glass Transition in Poly(butylene terephthalate)2010

    • 著者名/発表者名
      Takashi Konishi, Yoshihisa Miayamoto
    • 雑誌名

      Polymer Journal

      巻: 42 ページ: 349-353

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ガラス状態での異常結晶成長挙動について2009

    • 著者名/発表者名
      小西隆士
    • 雑誌名

      人環フォーラム 25巻

      ページ: 28-29

  • [学会発表] ポリブチレンテレフタレートのガラス結晶化と中間相を経由する結晶化モデルについて2010

    • 著者名/発表者名
      小西隆士・深尾浩次・宮本嘉久
    • 学会等名
      日本物理学会 第65回年次大会
    • 発表場所
      岡山大学津島キャンパス(岡山県)
    • 年月日
      2010-03-23
  • [学会発表] ポリブチレンテレフタレートのガラス結晶化過程の解明2009

    • 著者名/発表者名
      小西隆士・深尾浩次・宮本嘉久
    • 学会等名
      非平衡ソフトマター物理学のフロンティア ソフトマター物理 第3回公開シンポジウム
    • 発表場所
      京都大学桂キャンパス(京都府)
    • 年月日
      2009-11-20
  • [学会発表] ポリブチレンテレフタレートのガラス結晶化過程の構造変化についてII2009

    • 著者名/発表者名
      小西隆士・深尾浩次・宮本嘉久
    • 学会等名
      第58回高分子学会討論会
    • 発表場所
      熊本大学黒髪キャンパス(熊本県)
    • 年月日
      2009-09-17
  • [学会発表] SAXS study on crystallization from glassy state of poly(butylene terephthalate)2009

    • 著者名/発表者名
      Takashi Konishi, Yoshihisa Miyamoto
    • 学会等名
      2009 International Discussion Meeting on Polymer Crystallization
    • 発表場所
      Galaxy Hotel(上海・中国)
    • 年月日
      2009-08-13
  • [学会発表] ポリブチレンテレフタレートのガラス結晶化過程の構造変化について2009

    • 著者名/発表者名
      小西隆士・深尾浩次・宮本嘉久
    • 学会等名
      第58回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県)
    • 年月日
      2009-05-27

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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