界面活性剤水溶液では界面活性剤分子の疎水基が結晶化するクラフト温度以下で、ゲル状の2分子膜ラメラドメインが過剰水中でμmスケールの構造を形成する。研究課題代表者は非イオンのポリオキシエチレン系界面活性剤C_<16>E_<6'>C_<16>E_7(C_<16>H_<33>(OC_2H_4)_<6or7>0H)に注目し、ベシクルや巨大ネットワーク構造を形成する要因の解明を目指してきた。本研究課題における23年度での研究では、主にクラフト温度以下で現れるμmスケールの構造およびその形成過程を共焦点顕微鏡および小角・広角X線散乱により調べてきた。C_<16>E_7系でのベシクル形成過程は単一膜ベシクル形成モデルで報告されているものと類似しており、ベシクルの形成要因はディスクのエッジ部分の不安定性(線張力)と膜の曲げエネルギーとの競合で説明できることが分かった。一方、C_<16>E_6系の形成過程では、C_<16>E_6系のラメラドメインの中には2分子膜が300枚程度積層しており、C_<16>E_7系と比べて厚い層を形成していることと、膜を構成する界面活性剤分子が密に配列してため曲げ弾性率が大きいこと、が原因となり丸く閉じることで曲げエネルギーが増大しエッジ部分の解消はできないため、ドメイン同士の融合を進めることでネットワーク型の安定構造へと向かうのではないかと考えている。
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