ガラス転移近傍の遅い動力学において特徴的は不均一ダイナミクスの時空間構造を特徴づけるため、多点・多時間相関関数による解析を行った。前年度に行った解析をさらに深化させ、動的不均一性の寿命の時間スケールによる依存性を詳細に解析した。その結果、寿命分布に多重的な構造があることを見出した。つまり、短い時間スケールの不均一ダイナミクスは短い寿命で消滅し、その一方で長い時間スケールのものの寿命はより長くなることを明らかにした。これまで、理論・計算シミュレーションから不均一ダイナミクスの寿命を解析した研究がいくつかなされてきたが様々な結果が報告されていた。本研究ではその原因が調べる時間スケールによるものであることを明らかにした。さらに、新しく導入された動的不均一性の寿命のガラス転移における役割を明らかにするために周波数に依存した拡張Stokes-Einstein則を解析した。その結果、低周波数極限でみられるStokes-Einstein則の破綻を特徴付ける時間スケールが本研究で見出された動的不均一性の寿命と相関があることを明らかにした。ガラス状態でStokes-Einstein則が破綻することは古くから知られていたが、本研究によって動的不均一性がStokes-Einstein則の破綻に直接関与することが明らかになった。
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