研究概要 |
地震波速度トモグラフィ法のための基礎データである地震波形の収集およびその読み取りを行った.対象とした地震は西南日本で発生した地震のうちM2.5以上のものでり,それらの地震についてP波,S波の到着時刻を読み取った.また,地震減衰構造推定のためのデータを得るために,地震波形に対してスペクトルを表示し,そのスペクトルから震源の周波数特性をあらわすコーナー周波数,および周波数の減衰をあらわすt^*を決定するプログラムを作成した.さらに,減衰構造推定のためのインバージョン(逆解析)プログラムを作成した. 収集された地震波形データを用いて,近畿地方の三次元地震波速度,減衰構造の予備解析を行った.その結果,紀伊半島下の上部マントルには大規模な低速度域が存在すること,その低速度域は紀伊半島下のフィリピン海スラブ内まで貫入しているようにみえること,和歌山の群発地震震源域や1995年兵庫県南部地震震源域直下の下部地殻には低速度・高減衰域が分布すること,などの特徴が明らかになった.上部マントルの低速度域は,高温異常に加え多量の流体を含むと考えるとその速度低下を説明できることから,紀伊半島直下には深部から流体が供給されていると推測される.これらの結果は,深部からの供給された流体によりフィリピン海スラブが変成を受け,最終的にはスラブを突き抜けて下部地殻にまで流体が上昇してきていることを示唆しており,地殻内に供給された流体により和歌山群発地震や低周波地震が発生に深く関与していることを示している.
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