研究概要 |
昨年度に引き続き,地震波速度構造解析のための基礎データである地震波のP波・S波到着時刻データの作成を行った.読み取りでは,2008年以降に発生したマグニチュード2.5以上の地震を対象とした.また,これまでに読み取ったデータを用いて,近畿地方の詳細な三次元地震波速度構造を推定した結果,紀伊半島下に沈み込むフィリピン海スラブの海洋性地殻が低速度異常となっていること,和歌山の群発地震震源域や1995年兵庫県南部地震震源域直下の下部地殻には低速度域が分布すること,四国の中央構造線下では下部地殻が低速度になっていることなど,顕著な特徴が明らかになった. さらに,地震波形データを用いて地震波減衰構造の推定を行ったところ,フィリピン海スラブの海洋性地殻が高減衰異常を示すこと,群発地震震源域直下に高減衰域が存在するとなど,地震波速度構造と非常に相関のよい構造が得られた.しかしながら,速度構造ほどは分解能が高くないという問題もあり,定量的な議論までは行えなかった. 減衰構造の解の空間分解能および信頼性をより向上させるために,スペクトル比法を用いたコーナー周波数(fc)および波線平均の減衰をあらわすt^*を逐次的に推定する手法の開発に着手した.この方法では,強いトレードオフがあるfcとt^*を独立に推定することで,精度よいt^*の推定が可能となる.現在,東北地方下の地震を用いて,開発した手法の検証を行っているところである.さらに,減衰構造推定のインバージョン手法を改良し,フィリピン海プレートの形状を考慮した解析ができるようにした.
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