研究課題
海洋波浪起源のノイズや地震記録のコーダ部分などはランダム信号と呼ばれているが、2つの観測点で記録されたランダム信号の相互相関をとると、あたかも片方の観測点を震源、もう片方の観測点を観測点とするような地震波伝搬記録が得られる。この特性を利用して、活火山における地震波速度構造およびその時間変化を求める研究を行った。我々は豊富な地震観測が行われている浅間山のデータを用いて、地震波速度構造およびその時間変化を求めた。まず、各観測点の上下成分の地震記録の相互相関をとることにより、観測点間の地震波伝搬を抽出した。抽出された地震波はレイリー波であるので、そこからS波速度構造を求めることができる。このようにして、我々は山体西部の深さ5-10kmにおいて顕著な低速度領域を発見した。この低速度領域は直径5kmもしくはそれ以下という小さなものであり、走時トモグラフィなどの従来の方法では検出が不可能と考えられる。地殻変動観測や人工地震を用いた浅部地震波速度構造などと組み合わせることにより、本研究により抽出された低速度領域はマグマだまりであると推定した。また、我々は地震記録のコーダ部分を用いて、浅間山の火山体全体を平均したレイリー波位相速度の時間変化を推定した。レイリー波位相速度は、2008-9年噴火に1年ほど先立って1%ほどの顕著な低下を見せている。これは、地殻変動データによって推定されるマグマ貫入よりも先行するものであり、求められた速度変化のメカニズムは明確にはなっていない。
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