2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)の断層破砕帯を横断する超稠密地震計アレイ観測にて取得された波形データの解析を進めた。超稠密地震計アレイ観測データの連続波形データと、アレイ周辺の定常地震観測点の波形データを統合し、この波形データに対して波形相互相関処理によるmatching filter法を適用した。その結果、アレイ周辺で発生した微小地震を多数検出することができた。これらの微小地震のP波・S波の初動走時データを読み取りトモグラフィー解析をおこなうことで、地震波速度構造モデルを構築した。深さ4kmよりも浅い領域のアレイ直下であれば、数百mの空間分解能に到達することが確認できた。その結果、2つの既存断層に対応すると考えられる低速度帯がイメージングされた。具体的には、アレイ直近の山地境界断層に対応した低速度帯と、その深部に位置する餅転-細倉構造線に対応する低速度帯が西に傾斜していることが示された。これらの低速度帯は、深さにより低速度の度合いが変化する。低速度帯と震源分布の対応を見てみると、一部の地震は低速度帯内に存在するが、低速度帯よりも深部に存在するものもある。これらの低速度帯は、地殻内に存在する流体や破砕帯内のクラック等を意味している可能性があり、断層帯の強度は低いと推測される。 また、2011年東北地方太平洋沖地震の後に生じた誘発地震について調べることで、断層強度に関する新たな知見が得られた。本震発生の約10分後に、茨城県北部では中規模地震が浅い地殻内で誘発された。地震発生前後の地震のメカニズム解を比較することで、深さ16~17kmでは応力場の変化が起きていたことを明らかにした。東北沖地震が引き起こした伸張変形により、このような応力場の変化が生じたと考えられる。さらに、地震発生後も様々なタイプのメカニズム解の地震が観測されており、断層強度が低いことを意味する。
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