本研究の目的は、光の輻射圧を利用したアクチュエータ(光アクチュエータ)を地震計や傾斜計といった地球観測機器へ応用するための基礎的な開発研究を行うことである。地球科学の分野では、地震計やGPSによるネットワーク観測、SARや重力観測衛星など人工衛星を用いた新しい観測手法を導入することによって、目覚しい発展を遂げてきた。特に観測機器を広範囲・高密度に展開して行うネットワーク観測の手法は地下構造探査や地震震源過程、火山噴火過程などの基礎科学的視点や防災の観点から極めて重要なものとなっている。近い将来、より空間分解能を高めたデータを得るために、ネットワークの一層の多点化や高密度化を進める必要が生じるものと考えられる。その一方で、従来個々の観測点では既存の地震計などが利用されており、設置の容易さや保守性などの観点からは必ずしも大規模なネットワークを構成するために最適化されていない。本研究では、光アクチュエータを大規模ネットワーク用観測装置を実現するための鍵となる要素技術と位置づけ、その基礎的な開発研究に取り組む。具体的には、別に開発した超伝導磁気浮上型回転地震計の参照振り子の角度制御を、光アクチュエータによって行うことを通じて各種問題の抽出および解決に取り組む。 本年度は2ヵ年計画の1年目にあたり、高出力光ファイバレーザを購入・調整して光出力を実測した。また、別に行った観測結果から参照振り子を制御するために必要な力を見積った。これらの結果から、準備したレーザーで振り子の制御が可能であることを明らかにした。
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