研究概要 |
「噴火データベースの構築」では,データベース連動型のWebアプリケーション開発システム「LAMP」を使用して昨年度構築したものをさらに拡張し,マグマ中の揮発成分であるH_2Oの水素同位体比やCO_2のデータ,2011年霧島山新燃岳噴火における傾斜計・GPS観測に基づく地殻変動量やそれによって推定されたマグマ噴出率などの,より多項目にわたる観測データを新たに加えた.特に水素同位体比は,火道流数値モデルの解析によってマグマ上昇中における火道壁方向への脱ガスの程度を反映する重要なパラメータであることがわかったため,多くの噴火事例についてそのデータベースを構築した.一方「火道流数値モデルの開発」では,マグマ上昇中の発泡と脱ガス,結晶化を考慮した数値モデルの解析によって,定常火道流におけるマグマ溜まり圧力とマグマ噴出率の関係,多様な噴火タイプに対応する定常火道流の種類,定常火道流間で生じる火道流の時間発展変動を系統的に分類化した.その結果,斑晶量が低いマグマの場合,深部からマグマ溜まりへのマグマ供給率が十分に低くても,火道壁方向への脱ガス浸透率が僅かに減少することによって,火道内の発泡度や過剰圧の急増,火山ガス組成の変動を伴う溶岩ドーム噴火から爆発的噴火への急激な遷移が生じることがわかった.データベースによると,斑晶量が体積分率0.5以下の低斑晶量マグマの溶岩ドーム噴火は一般的に数多く観測されていることから,このタイプの遷移過程が十分に起こりうる現象であることが示された.この遷移過程における火道内の急激な変動を多項目観測によって検知することが,爆発的噴火への推移予測を行う上で極めて重要であると考えられる.また,霧島山新燃岳噴火についても本研究で開発した火道流数値モデルによる解析を行い,その噴火パラメータのデータベースを再現し得るマグマ上昇過程を明らかにした.
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