研究概要 |
これまで太陽系外では,主に観測に視線速度法が用いられていることによる限界もあって,太陽系に似た木星型惑星系を持つ系はあまり見つかっておらず,10AUを超える範囲の系外惑星の分布は知られていない.その中で,近年10AU以遠の領域で惑星の直接撮像の観測の試みが盛んに行なわれている.直接撮像しやすい領域に存在する巨大ガス惑星は,惑星間散乱を受けた可能性が高い.そこで現在観測が難しい領域において,観測が可能な領域の惑星分布から推論ができるように,惑星散乱によって惑星の軌道が進化する様子をシミュレーションした. 本年度は,3つの木星型惑星が形成された場合について,惑星散乱の計算を行い,どのような惑星の分布が作られるかの数値計算を開始した.実際に観測されている内側領域の惑星分布と比較するために,中心星によるダイナミカルタイドや相対論効果など,内側領域の惑星に強く働く効果を含めたコード開発を行い,どのような短周期惑星と遠方惑星が形成されるかのテスト計算を始めた.木星型惑星の質量,半径をそれぞれ3種類,惑星の初期位置を3種類変え,短周期化率の変化を求められるようにした.また,中心星によって,どのような潮汐進化を受けるのかを調べるために,ダイナミカルタイドのファンダメンタルモードとイナーシャルモードを変化させた半解析的数値計算を行い,実際に観測されている系外の惑星の軌道要素の比較を行った.潮汐力の強さは,短周期化率にあまり大きく寄与しないが,最終的に離心率を残す惑星の分布を変化させる傾向が出ている.また,暫定的な結果として,短周期惑星を持つ系と持たない系では,遠方惑星の分布に違いが見られる.
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