研究概要 |
本研究は,将来の測地衛星の新しい姿を提示することを目指して,軌道の選択・衛星の設計の2面から検討を進めている. 第一項目である衛星軌道の組み合わせの選択においては,新たな衛星を打ち上げたときに,どの程度の量の測距データがどのようなパターンで得られるか,について見積もりを行った。レーザ測距技術は光技術であるゆえに観測の可否が天候などに大きく左右される,そこで,世界の主要20局からの既存の衛星に対する測距観測の密度を,昼夜の別・衛星の可視状況・仰角の別に算出した.これをもとに,一定の軌道パラメータの範囲で,可観測性の見積もり,つまり測距シミュレーションデータの作成が可能になった. 第二項目の衛星の光学的な設計の検討のため,夏期にはイギリスのHerstmonceux宇宙測地局を訪ね,試験データ取得のため,測距実験を実施した.Herstmonceux局では,オーストリアのGraz局に次いで,繰り返し率2kHz,パルス幅10psという世界最先端の新レーザシステムを導入している.測距観測データの残差プロファイルにより,衛星に搭載されている逆反射鏡の詳細な光学応答を取り出すことができる.本年度は,上記2局観測データから,特にGIOVE衛星・あじさい衛星の光学応答について解析を行い,反射波形と衛星姿勢との関係を導いた.これと並行して,光学応答を計算機上でシミュレートするためのソフトウェア開発を行った.単一の逆反射鏡の作る遠方界回折パターンを計算することに成功し,その自前の結果がアメリカやイタリアの研究者のものと高い精度で一致することを確認した.
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