研究概要 |
本研究課題が掲げている姉妹衛星構想の実現性調査のための軌道決定ソフトウェアの開発に注力した.C++言語で開発することとし,レーザ測距データのほか,異種のデータが混合する場合の解析も可能な設計にしている.本ソフトウェアは"c5++"と呼ぶことと決め,すでに,VLBIデータの解析による地球回転パラメータUT1の速報解導出に適用している.あわせて,解析の高精度化のためには,最新の物理モデルを取り込むことが不可欠であり,平成22年末に公開されたIERS Conventions 2010に対応すべく,衛星加速度モデル・地球回転モデル・局位置変動モデル・大気遅延モデルなどについて開発を進めた.本ソフトウェアは,これから,衛星軌道組み合わせと座標系パラメータ決定との関係づけのためのシミュレーション解析の中核部分として用いることとなる.また,衛星軌道決定精度向上に有用な衛星の姿勢パラメータの導出を,既存の「あじさい」衛星を用いて実施した. 並行して,逆反射鏡の光学応答を計算機上でシミュレートするためのソフトウェア開発も継続して推進した.特に,平成22年度においては,逆反射鏡の裏面直交度が不均一な場合の解析を可能とした.衛星・地上局の光行差を考慮するうえで,3つの裏面直交度をあえてそろえないように設定することの有効性を探るためのツールができたことになる.また,光学応答を実測するための光学システムを簡易版ながら組み上げており,平成23年度に実測を目指す.実験室で実測する遠方界回折パターンと,計算機上でシミュレートする遠方界回折パターンの比較を1研究機関内で行うことは世界でも稀な例となる.
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