「姉妹衛星」の実現可能性や最適な軌道を研究すべく,数値解析に使用するソフトウェア “c5++” の開発を継続して行った. まず,地球重力場の時間変化を求めることを可能にした.平成24年度においては,本ソフトウェア本体だけでなく解析スキーム全体の最適化・効率化を図り,過去20年以上にわたる衛星レーザ測距データを用いて,4x4 次までの地球重力場を導出することに成功した.GRACE 衛星による解との一致度も高く,C20 項に関してはそれを凌いでいると結論付けた.平成24年度中に発表したこの成果が注目を集め,地球上特にグリーンランドの氷の減少を扱っている北海道大学との共同研究に発展した.2000年台にグリーンランドの氷の減少があることはすでに知られているが,1990年台は目立った氷の増減がなかったことを示すことができた. 次いで,地球重力場の0次項(GM),地球基準座標系のスケール,そしてレンジバイアス,この3者が絡み合う高い相関が,現状の衛星組み合わせにおいて,決定精度の足かせになっていることを明らかにした.将来の衛星軌道配置を考える上では,まず円軌道を仮定するならば,レンジバイアスは共通化できることを前提としたうえで,できるだけ高度の異なるものを組み合わせることにより,3者の相関を下げる効果があることを数値シミュレーションによって示した.また,軌道傾斜角の差はほとんど改善に寄与しないことも明らかにした.加えて,2つの組み合わせでなく,1つの衛星を楕円軌道に配置することでも,程度はやや小さいものの,相関を下げる効果があることが示された.
|