磁気岩石学的手法を用いて火山噴出物を精密に解析することで、マグマの誕生から噴火までの詳細なプロセスを明らかにするため、本年度は諏訪之瀬島火山1884年噴火溶岩と伊豆大島火山1986年噴火溶岩を対象に、磁性鉱物の分離と分離した鉱物の磁気分析方法の確立を目的とした研究を行った。すでに試料を採取済みの諏訪之瀬島溶岩から鉱物を分離し、構成鉱物単の位での磁気分析を行った結果、ホスト鉱物の結晶化プロセスの違いに基づいて包有される磁性鉱物の化学組成、粒子サイズが異なることが明らかとなった。鉱物単位での磁気岩石学的情報の取得が火山噴火プロセスの詳細な解明に有効であることが実証された。この成果は日本地球惑星科学連合2009年大会で報告済みであり、現在論文化に向けて研究をまとめている。また伊豆大島1986年噴火溶岩の現地調査と試料採取を行い、溶岩噴出後の冷却過程に起因して樹枝状の磁性鉱物が成長し、その結果として磁性鉱物のサイズ分布が極端にバイモーダルになること、磁性鉱物の微結晶の組成が変化することが明らかとなった。火口から放出された後の火山噴出物の運搬・堆積過程を解明する上で、微小な磁性鉱物の解析が有用であることが強く示唆される。この成果は日本地球惑星科学連合2010年大会で報告する予定である。また以上の研究を遂行する上で必要な種々の岩石磁気測定装置、実体顕微鏡装置などの導入と整備を行い、微小な磁性鉱物を観祭、解析するためのシステムを構築した。
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