研究概要 |
本研究は,磁気岩石学的手法を用いて火山噴出物を精密に解析することで,マグマの誕生から噴火までの詳細なプロセスを明らかにすることを目的としている。本年度は最終年度であり,これまでの研究成果をまとめることに集中して研究を行った。雲仙火山の中・長期的なマグマ供給系の変遷を考察するため,歴史時代の3回の噴火による溶岩試料に関して研究を進めてきたが,本年度はFeTi酸化鉱物の微小な結晶や,skeletal rimを伴う結晶の化学組成を詳細に分析し,議論に必要十分なデータを収集した。得られたデータに関して,新しい地質温度圧力計を適用し,これまでの分析データと合わせて,3噴火のマグマ温度,酸素雰囲気の復元を行った。その結果,3溶岩試料が異なる磁気岩石学的特徴を有しており,3回の噴火活動のマグマ混合プロセスの違いによる,マグマの温度・酸化還元状態・噴出速度(冷却速度)の違いを反映していることが明らかとなった。この成果はすでにJournal of Volcanology and Geothermal Research誌に投稿済みである。また伊豆大島火山1986年噴火溶岩に関して,溶岩噴出後の冷却過程を反映してFeTi酸化物の樹枝状結晶が成長することをすでに報告(学会発表)しているが,本年度は論文化に向けてデータの補充を行った。近日中に論文の投稿を予定している。これらの研究により,FeTi酸化物の磁気岩石学的な解析が,火山噴火プロセスの復元に有効であることを具体的に示すことができた。
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