研究概要 |
平成21年度は,主として地震波形データの蓄積を行う年度とした. まず,2009年6月8日に箱根火山周辺の2箇所(OHSB,KMYB)に臨時地震観測点を設置した.これら2つの観測点は,ともに,2006年9月,2006年10月,2008年4月に火山活動に伴うと考えられる群発地震活動が発生した地域の近傍である.また,OHSB観測点は,2001年の群発地震活動が終息した後に新たな噴気活動が始まり,現在でも継続している場所の真上に設置した.このように,特に近年活発な火山活動を繰り返している地域を臨時地震観測点の設置地域として選定した.観測点の設置後,2009年6月,7月,9月,11月,2010年1月,2月の計6回にわたって観測現場へ赴き,バッテリ,データカード,地震計の交換といった保守作業を実施した.臨時地震観測を実施した結果,2009年10月13日までの期間には2,909個の地震の波形が収録でき,当初予定通り,地震波形データの蓄積が進行した. 観測期間中である2009年8月4日から12日前後にかけて,最大マグニチュード3.2の地震を含む群発地震活動が臨時観測点設置地域の北西約4~6kmで発生した.行竹ほか[2009]によると,この群発地震活動の精密な震源決定から微細なフラクチャ構造が推定された.この群発地震活動に対する解析は継続中であるが,過去に行った跡津川断層帯での減衰異方性の解析結果では,断層構造にともなう地震波の減衰の空間変化が検出されており,この群発地震活動においても微細なフラクチャ構造にともなう変化が検出されるものと期待される.なお,年度の後半には,2009年6月に収録したデータを用いて,予備的に火山地域においても減衰異方性の解析手法の有効性および結果の安定性の評価も実施した.
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