研究概要 |
岩石が破壊する際に発生する微小破壊にともなう弾性波(アコースティック・エミッション;AE)はその発生頻度の高さから,明瞭な破壊の直前過程が確認されており,破壊の前兆という観点から注目されてきたが,その正体は明らかになっていない.AEは自然地震の素単位とでも言うべき小破壊であるか,すなわち自然地震というマクロな破壊現象とAEというミクロな破壊現象が同一のスケーリング則で支配されているか否かを明らかにすることは,地震破壊の物理過程解明の大きな鍵となる.そこで,本研究では室内実験におけるAEの高感度広帯域連続観測を通じて,AEから自然地震までの階層性を明らかにする.平成21年度は,センサー・キャリブレーションおよび予備的な岩石破壊試験を実施し,2チャンネルのAEデータ取得をおこなった.具体的な成果は以下の通りである. 1)センサー・キャリブレーション:独自設計したエンドピースに,広周波数帯域の弾性波センサーを封入し,エンドピース端面から30ns程度で立ち上がる階段状の電圧パルスを送信し,センサー・アセンブリで受信することによって,構成されたセンサー・アセンブリの応答特性を調べた. 2)予備試験:無垢な花崗岩試料の表面に,低感度ながら広周波数帯域の弾性波センサーと従来型の圧電センサーを貼り,一軸圧縮破壊試験を実施した.試料表面にセンサーを貼った予備試験においては,大気圧下の試験とした.また,別途エンドピース内にのみセンサーを封入した試料を用いて三軸圧縮破壊試験を実施した. 3)データ集録:20~80MS/sでAEデータの集録をおこなった.予備試験においては,トリガー集録と連続集録の双方をおこなった.集録された波形からは,従来の圧電センサーでは得られないAEの周波数特性が得られることが明らかになり,大規模なAEはより小規模なAEに比べて低周波が卓越する可能性が示唆された.
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