研究概要 |
岩石が破壊する際に発生する微小破壊にともなう弾性波(アコースティック・エミッション;AE)はその発生頻度の高さから,明瞭な破壊の直前過程が確認されており,破壊の前兆という観点から注目されてきたが,その正体は明らかになっていない.AEは自然地震の素単位とでも言うべき小破壊であるか,すなわち自然地震というマクロな破壊現象とAEというミクロな破壊現象が同一のスケーリング則で支配されているか否かを明らかにすることは,地震破壊の物理過程解明の大きな鍵となる.そこで,本研究では室内実験におけるAEの高感度広帯域連続観測記録および鉱山において取得された極微小地震の波形記録を通じて,AEから自然地震までの階層性を明らかにする.平成22年度は,来待砂岩を用いた三軸伸張試験を実施し,集録されたAE記録を解析するとともに,南アフリカの金鉱山で取得された極微小地震の波形記録を用いた解析も並行して実施し,自然地震から得られている破壊スケーリングの外挿限界を探った.具体的な成果は以下の通りである. 1.三軸伸張試験:AEセンサーを貼り付けた来待砂岩試料を用いて封圧80MPa下で三軸伸張試験を実施した.毎秒30メガサンプル強の高速を維持しつつ1時間強の試験時間を通じて連続波形集録に成功した. 2.砂岩ではAEの発生頻度が低く,センサーの感度が十分でなかったため,震源決定が可能なほどの多チャンネルで同時に得られたイベントは少なかった.そのため,スケーリングを明らかにするには至らなかったが,伸張試験時においても,開口型だけでなくせん断型の微小破壊が発生していることが示唆されるという派生的な成果を得た. 3.鉱山微小地震解析:南アフリカの金鉱山で得られた高周波数サンプリング記録(毎秒5万サンプル弱)を解析した結果,M=-3程度の非常に小さい地震においても自然地震の破壊スケーリングが外挿可能であることが分かった.
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