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中緯度大気海洋相互作用を研究する上で難しいところは、大気のロスビー変形半径と海洋のそれとでは10倍から100倍程度、異なるため、スケールの違う2つの物理的対象に対してアプローチしなければならない点にある。数値モデリング研究においては、中緯度大気海洋相互作用のような問題は、超高解像度の数値モデルを、超大型高速計算機によって数値計算する方法がとられるべき1つの解決手法である。ただこの方法は莫大な計算資源を必要とするため、全球のうちのある地域のみに対し領域モデルを全球モデルにネストする数値計算が他方で行われてきた。領域モデルには境界条件があるため、その境界において全球モデルのデータを側面から与えることとなる。したがって、この方法では、ある特徴的な海洋のスケールの小さい現象が、全球の大気にどのような効果を与えるか分からなかった。そこで、本研究では黒潮域が作り出す海洋前線が冬季の全球大気にどのような影響を及ぼすかを、領域モデルと全球モデルが双方向にネストするモデルを開発して調べることとした。開発に当たっては、東京大学などが開発したMIROCの大気大循環モデル部分に、気象庁が開発した非静力学領域大気モデルを、双方向にネストするシステムを開発した。そのモデルは別プロジェクトによって中緯度域や熱帯域に適用して一定の成果を得ている。本研究課題では、さまざまな海面水温データを全球モデルおよぶ領域モデルに与えられるように調整した。実験は安定な統計が得られる程度の十分な積分期間、海面水温前線が鋭い場合と緩やかな場合の二通りの実験を行った。その結果、前線のまわりには降水量に有意な変化を見ることができ、またその応答と整合的な大気応答も見られた。ただ、長期の双方向ネスト実験に影響によるとみられる気圧配置の気候値の歪みが目立っていた。これは今後の課題として提示される。
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