研究概要 |
平成21年度までに行った高解像度海洋シミュレーション(OFES)の出力解析の結果,北太平洋の東西積分値で見たところ,中規模渦は,黒潮続流の緯度帯の北側(南側)で北向き(南向き)に熱を輸送しており,特に,北向きの渦熱輸送量は大規模流による熱輸送量に匹敵することが明らかになった.本年度は,渦熱輸送量の水平分布について詳細な解析を行い,東西積分値で見られた顕著な北向き・南向きの渦熱輸送量が,どの場所における渦熱輸送を反映しているのか,渦熱輸送量の発散成分を抽出し調べた. 渦熱輸送量の発散成分は,概ね,黒潮および黒潮続流の流軸の北側(南側)で北向き(南向き)を示す.興味深いことに,渦活動は黒潮続流のほぼ全域で大きいにも関わらず,渦熱輸送量の発散成分の南北輸送の卓越する海域は,黒潮続流が離岸して直ぐの,およそ145°E以西の領域に限られる.そこでは,渦熱輸送量の発散成分のベクトルは,外に向かって放射状に広がっており,渦が熱を外部に輸送している様子が伺える.これらのベクトルの発散域は,大規模流による水平熱収束が生じる場所とよく対応することから,離岸直後の黒潮続流域において,大規模場から中規模渦に熱の受け渡しが行われていると推測される.
|