黒潮暖水塊を含む中規模渦の特性を定量的に明らかにするため、衛星海面高度および既往の現場観測データの解析を行った。勢力の強い高気圧渦は、黒潮続流の北側に多く分布し、この高強度帯は日本海溝および千島カムチャツカ海溝に沿って北側に延伸していた。また、亜寒帯前線付近にも比較的勢力の強い高気圧渦が分布していた。高気圧渦の平均移動速度は、黒潮続流の北側では西向きに1-5cm/s、46゜Nより南側の海溝域では北~北東向きに1-2cm/s、亜寒帯前線では北東向きに0.5-1cm/sと見積もられた。 海面高度から検出された高気圧渦の中心付近のプロファイルを解析した結果、黒潮・親潮続流域には上層に高水温・高塩分の中核水を保持する暖水性高気圧渦が高気圧渦全体と、低水温・低塩分水を保持する冷水性高気圧渦の両方が存在することがわかった。暖水性高気圧渦は黒潮続流から海溝の最深部に沿って多く分布していたのに対し、冷水性高気圧渦は海溝の縁辺部と千島列島沖合に多く検出された。35-50゜N、140-155゜Eの範囲では高気圧渦全体の約85%が暖水性、15%が冷水性であった。暖水性高気圧渦の多くは、上層の高水温・高塩分核の下、ポテンシャル密度26.70σθ付近に低温・低塩分の偏差を有する2重核構造を持っていた。北太平洋の外洋域ではポテンシャル密度26.70σθは通常海面に露出しないことから、上層の黒潮系暖水渦と中層のオホーツク海系冷水渦がalignment過程により鉛直的に結合していることが示唆された。
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