研究概要 |
今年度の本研究の目的は、非球形粒子の効果を導入した衛星解析用大気放射モデルの整備・公開と、大気大循環モデル用大気放射モデルへの非球形粒子の効果の導入である。 昨年度、ナローバンドモデルRstar6bへ氷晶の代表格である六角柱粒子に寄る散乱を導入し、今年度は回転楕円体粒子による散乱を導入した。これはAERONETという観測網の解析のために作られた散乱特性データであり、砂塵粒子を対象としたサイズパラメータ、複素屈折率を持つ。計算手法はT-matrix法と改良型幾何光学近似法であり、対応するサイズパラメータで計算されている。このデータのうち、7つのアスペクト比(0.33,0.48,0-69,1.00,1.44,2.07,2.99)について散乱特性テーブルを作成した。角度格子は112で球形粒子、六角柱粒子と共通としたが、サイズパラメータ、複素屈折率については内挿に寄る誤差が想定されたためデータ点を用いた。また、Rstar内では様々な粒子サイズが混在することが想定されているため、回転楕円体の散乱パラメータの積分を行うよう、プログラムを一部書き換えた。 以上の導入をもって、Rstarは6bから7にアップデートした。この更新に伴い、粒子データベースAERDBについても更新を行った。このデータベースは各粒子モデルの濃度の高度分布や粒子サイズ分布、複素屈折率などが記載されている。本更新では非球形粒子の導入に寄る粒子モデルの増加、氷粒子の複素屈折率の更新などをおこなった。 Rstarの更新を受けて、これら2種類の非球形粒子の散乱についてmstrnXへの導入を試みた。mstrnXの散乱テーブルは、球形で仮定している粒径分布で粒径積分を行っているが、六角柱粒子、回転楕円体粒子では等価体積半径を用いて計算し、テーブル化した。非球形粒子の範囲外のデータについては球形粒子のデータを用いた。六角柱を氷晶粒子、回転楕円体をダスト粒子として計算を行うよう設定した。次年度はこの散乱計算について評価を行い、最終年度としてまとめを行う予定である。
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