本研究では、気象擾乱の熱力学メカニズムを考える上で重要なパラメータの一つである気温を高い時間分解能で観測できるレーダーリモートセンシング技術であるRASS(Radio Acoustic Sounding System)の性能を向上させ従来観測できなかったより微細な気温観測を可能とするとともに、従来観測が難しかった接地境界層領域へ応用した。 具体的には、複数のレーダー周波数観測により鉛直分解能を向上させる周波数領域干渉計映像法をRASS観測に応用する新アルゴリズムを開発した。これにより従来の測定では成し遂げられなかった優れた鉛直、時間分解能での全天候型微細気温鉛直構造を観測可能とした。MUレーダーを用いて複数の周波数を用いたRASS観測結果を用いてアルゴリズムを検証したところ従来150mに留まっていた鉛直分解能を6mまで向上させることに成功した。さらに、検討を行なったところ、音波の種類を変えることでより高鉛直分解能の観測も可能であることがわかった。 接地境界層の微細な擾乱は積雲対流などの気象擾乱発生の源となることが知られている。本研究では、従来のRASS観測では観測ができなかった接地境界層へ観測領域を広げる。従来1.3GHz帯ウインドプロファイラの観測最低高度は数百メートルに留まっていた。このアンテナを傾けてRASS観測を実現することにより、接地境界層内部のRASS観測を実現する。このためのアンテナ回転台を新たに開発し、任意の方位角、天頂角にアンテナを向けることを可能とした。
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