研究課題
海洋の物理現象で最も時空間スケールがかけ離れた、「深層海洋大循環」と「鉛直乱流拡散」との不整合が、現在の海洋物理学が抱える最大のパラドックスの一つとなっている。そこで本研究では、開発されて間もないsemi-prognostic法を用いて深層海洋大循環の数値シミュレーションを行い、現実的な鉛直乱流拡散のもとで、観測された水温・塩分の分布を再現する深層海洋大循環がどのようなものであるかを明らかにすることを最終目的としている。このような大規模な深層海洋大循環の数値シミュレーションを行うための前段階として、平成21年度は、まずsemi-prognosticスキームを組み込んだ海洋大循環モデルを、日本南岸沖、および、台湾北東沖における黒潮の数値シミュレーションに適用した。両数値シミュレーションともに、外洋域で観測される程度の小さな鉛直乱流拡散係数を仮定し、温度風バランスから導かれる密度場を伴う黒潮の流入・流出のみでモデルを駆動した。数値シミュレーションの結果は非常に良好で、2004年に起こった黒潮大蛇行の形成過程のみならず、周期90~120日で西方伝播してくる中規模渦と黒潮との相互作用によって引き起こされる、台湾北東沖での黒潮流軸・流速変動の再現にも成功した。比較的単純化したモデル設定のもとで、黒潮の流速場が良好に再現されたことから、水温・塩分の観測値からのずれを運動方程式の圧力傾度力項を通して間接的に補正する、semi-prognostic法が有効に機能することが確認された。
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Geophysical Research Letters 36,L18604
ページ: doi : 10.1029/2009GL039389
La Mer 47(1-2)
ページ: 19-21