研究の主眼は、氷床変動に対して、氷床力学、棚氷力学、および両者の境界での力学が果たす役割の定量的評価である。本年は、昨年度までの棚氷の水平方向の境界条件の数値モデル内での表現方法の議論と考察をふまえ、一次元棚氷モデルと統一的に表現できる境界条件を二次元に拡張し、棚氷モデルを実装した。さらに、実装した棚氷モデルを拡張し、底面の境界条件をおきかえることで氷流過程を表現出来るようにした。先に開発してあった氷床部分に棚氷・氷流過程を導入し、氷床形状の時間発展を計算することが可能になった。 棚氷部分に関しては解析解が求められる理想的な条件下で流動を求め、解の比較を行った。数種の水平解像度(棚氷の長さ 200km に対し最小解像度で200m まで)で棚氷の流動を診断し、得られた解が解析解を非常によく再現していることを確認した。また、水平二次元の理想的な条件下での計算、および、計算した速度を用いて棚氷の厚さの時間発展計算を行い、実装した棚氷モデルの特性を調べ、収束条件がよくなる方法について吟味した。 一昨年度当課題において、計算機の有限性に由来する非常に小さい数値モデル構築方法の不備が、時には数値実験全体に影響を及ぼし、その数値実験で着目している観点自体に大きな影響を与えることを示した。本年度はその結果を踏まえて棚氷モデルを設計しなおし、実装出来た。 今後はこの棚氷モデルの設計について論文を投稿する予定である。
|