複雑で多様な磁気嵐現象を一つのシステムとして理解するため手段として、内部磁気圏に捕捉された様々な荷電粒子の振る舞いを記述する方程式系の定式化と新しいシミュレーションコードの開発を行った。これまでは、数eVのエネルギーを持つ粒子の集合であるプラズマ圏、数keVから数百keVのエネルギーを持つ粒子の集合であるリングカレント、それ以上のエネルギーを持つ粒子の集合である放射線帯において、それぞれ個別のシミュレーションが用いられてきた。新たに開発したシミュレーションでは、数eVから10MeVという7桁ものエネルギー幅をシームレスに記述することができる。磁気赤道面に固定した座標系を用い、非ダイポール磁場のもと粒子の移流を解くことができるため、グローバルMHDシミュレーションによって表現した外部磁気圏モデルと結合することが容易にできる。テスト計算として経験的な電場モデル、磁場モデルを与えたところ、各エネルギー帯において以下のような特徴的なエネルギー分散構造を再現することができた。低エネルギー帯の局所的な断熱加速、ノーズ型分散構造と高エネルギー粒子分布の分離、磁気圏境界に粒子が衝突することによる消失にエネルギー依存があることが含まれる。このシミュレーションは、数100keV以上のエネルギーを持つ粒子の輸送過程を理解することや、グローバルMHDシミュレーションが記述する誘導電場による輸送と加速の効果、そして粒子の断熱加速の限界を理解する上での基盤モテルとして資されていく。また、内部磁気圏と電離圏という異なるプラズマ状態を一つのシステムを捉えるため、両者が結合したシミュレーション(CRCM)を実施し、磁気嵐時の赤道付近で生じる逆電流ジェット現象を説明することができた。このことは、内部磁気圏と磁気赤道が電磁気的に直接結合していることを意味している。
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