プラズマバブルの広域監視を効率的に行うため、パッシブレーダー技術を用いた短波電波距離測定装置を、ディジタル受信機を用いて開発した。ディジタル受信機には米国Ettus Research社のUSRP(Universal Software Radio Peripheral)を用い、制御・データ記録用PCで動作する観測ソフトウェアをオープンソースのGnuRadioソフトウェアをもとに開発した。受信機間で時刻同期したデータを取得するため、短波帯アンテナからの信号と同時にGPS受信機の1秒毎の時刻パルス信号を同時に受信し記録するシステムを開発した。 装置の動作、性能試験のために、国内短波放送局(ラジオNIKKEI、送信所:千葉県長柄町)を用いて、電子航法研究所(東京都調布市)と京都大学生存研研究所(京都府宇治市)の間で伝播距離差測定実験を行った。観測実験は2010年3月18日~29日の間行われた。得られた距離差は、両地点とも電離圏を経由して伝播したものとすると、情報通信研究機構によるイオノゾンデ観測(周波数ごとの電離圏反射高度を観測)から推定される距離差とよく一致した。また、測定の精度は約5kmであった。これらのことから、開発した装置は正常に動作し、本来の目的である豪州・日本間の短波伝播距離測定に十分な性能を有していることが分かった。この結果により、2010年度以降に予定されている、本装置を中心としたプラズマバブルの観測実験を行うことが可能となった。
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