研究概要 |
深度2-3kmの沈み込み帯の断層が陸上に露出する保田付加体の地質調査と試料採取を行い,沈み込み帯浅部と深部をそれぞれ特徴づける(a)ファッコイ構造と(b)メランジュについて,両者の変形記載,空間分布,それに切断関係の詳細を行った.現地地質調査では,各構造の変位方向などの構造解析を行ったほか,房総半島内陸部,東京湾沿岸,三浦半島へと調査範囲をひろげ,保田付加体の空間分布および大構造の検討を行っている(平成22年度も継続予定). 現地調査にて採取した試料を,実験室で大型研磨片を作成し,肉眼鑑定の後,研磨片の一部から薄片試料を作成し,光学顕微鏡,電子顕微鏡による組織検討を行った.また,帯磁率異方性を用いた粒子配列異方性解析を行い,両者の変形による組織,物性変化を抽出した.ここでの重要な成果は,(a)ファッコイ構造はリム部に粘土鉱物の配列が見られるものの,中心部がランダム組織である(現世の南海付加体のデコルマゾーンと同じ特徴である)のに対し,メランジュ((b))内部は非常に強い定向配列と間隙率減少を伴うことが,すべての検討から示されたことである. (a),(b)2種類の変形岩と母岩について,XRDによる粘土鉱物組成の検討を行った.(a),(b),両者とも粘土鉱物の総量は変化がないのに対し,メランジュ((b))内部では変形に伴って明瞭なスメクタイト消失とイライトの増加が定量的に明らかになった.摩擦係数の小さなスメクタイトが減少し,イライト化することで,ガウジ全体の剪断強度が大きくなることを示している.この強度に関する変化は,平成22年度に検討を行う予定である.
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