研究概要 |
本研究の主要目的である,深度2-3km領域における堆積物の変形と物性変化の相関について,特にこの深度領域におけるプレート境界断層の変形様式の変化を確立し,さらにここで特徴的な粘土鉱物遷移を定量的に明らかにした.これらの成果をまとめ上げ,複数の国際学会で発表したほか(うち1件は招待講演),2011年3月27日に国際誌(Geology)に論文を投稿した. 本研究は,深度2-4km領域においてプレート境界の変形がそれまでのファッコイと呼ばれる破砕変形から強いBlock-in-matrixの変形様式に変化すること,それに伴って粘土鉱物がスメクタイトからイライトに遷移し,間隙率の減少,強い粒子の定向配列を見いだした.これらは断層面に摩擦係数と粘着力の増加をもたらし,結果として歪み硬化をもたらしていることが明らかになった.これらの重要な点は,(1)陸上付加体などに厚く発達する過去のプレート境界変形岩として注目されるテクトニックメランジュの厚化メカニズムが明らかになったこと,さらに(2)地震発生帯直前に形成される強度および物質化学的不均質性が明らかになったこと,である. 当年度に計画していたイライトの年代検討は,イライトの抽出が難しく,成功しなかった.そのためその目的であったイライトが断層活動により形成されたか,デトリタル起源かを区分するために,カリウム量等の算出をXRD測定から検討しており,まもなく結果が得られる予定である.
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