研究課題
新生代中ごろに日本海が形成されるのに伴い、日本列島の地質帯は大きく再配列が成されたと考えられる。その「再配列前」の情報を保持するものとして、白亜紀浅海性堆積物の調査を西日本を中心に行った。昨年度は主として熊本県・姫浦層群を特に対象とし、現在データをまとめ、発表の準備をしている段階である。その対比として、白亜紀付加体の堆積岩起源の変成岩についても調査研究も進めている。従来ジュラ紀付加体の変成部と考えられてきた「三波川帯」の原岩の大部分が、四万十帯とほぼ同時代の白亜紀後期付加体である事を再三示してきが、今年度は天竜地域の三波川帯の堆積・変成年代を明らかにし、「ジュラ紀付加体を起源とする三波川帯」が存在する可能性をさらに制限することができた。また、長崎変成岩分布域中に存在する花崗岩の小岩体が前期白亜紀の年代を持つことも突き止めた。この時代の花崗岩の存在は、白亜紀堆積物中のジルコンやモナザイトの年代分布を論じる上で、一つのカギとなるであろう。一方で、日本列島に存在する先白亜紀地質体も無視できない存在であり、そこの年代学的研究は白亜紀堆積物の年代解析に於いても重要な位置を占めると考えられる。これに関しては、本年度は富山県宇奈月地域の花崗岩から「日本最古の鉱物(37億5千万年前のジルコン)」の発見などに貢献をした。この発見は、日本列島の地質帯の再配列が従来考えられていたよりも複雑であった可能性を示し、日本列島形成史を論じる上で今後重要な情報となる可能性がある。
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