本研究では、ジュラ紀付加体中に含まれる珪質粘土岩からコノドント自然集合体を発見・記載し、後期ペルム紀から前期三畳紀コノドントの系統、分類、進化および古生態を解明することを目的としている。本年度は、当初予定していた栃木県足尾山地の秋山川上流地域の試料に加え、新たな情報にもとづいてカナダ西部のブリティッシュコロンビア州カシェクリークおよび岐阜県舟伏山地域から採取された試料について研究を行った。これまでのところ得られている結果は以下のとおりである。1、栃木県秋山川上流地域に分布する珪質粘土岩層からコノドントエレメントの密集層を発見し、その地史学的・堆積学的意義について考察した。2、カナダ・カシェクリークに分布する珪質頁岩層から三畳紀コノドントを発見した。しかしながら、上記栃木県およびカナダの試料について自然集合体の発見には至らなかった。3、岐阜県舟伏山地域の黒色粘土岩層から最前期三畳紀を示すHindeodus parvusを含むコノドントの自然集合体が得られた。これらの集合体にもとづき、Hindeodus属コノドントのアパレイタスの復元を行った。Hindeodus属はペルム紀-三畳紀境界を決定するためのもっとも代表的な示準化石であり、自然集合体は世界でも初めての発見である。この研究成果は22年6月の日本古生物学会で発表する。 22年度はこれらの標本の記載を進め、最前期三畳紀コノドントの分類、系統と古生態に関する考察を行う予定である。
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