研究概要 |
本研究は,サンゴ礁分布域の北限近くに位置する琉球列島を対象に『氷期-間氷期の気候変動に対応して造礁サンゴ群集の分布に変化があったのか否か?』を明らかにすることを目指している.現在,琉球列島には約400種のサンゴが分布するが,北に向かって低下する表層水温と相関するように,その数は減少する.またサンゴの種類も八重山~奄美諸島の「熱帯サンゴ礁タイプ」と種子島~紀伊半島の「温帯非サンゴ礁タイプ」,さらに北の「高緯度タイプ」と緯度ごとに異なるグループが分布する.そこで,より北に位置して気候変化の影響を受けやすいと思われる喜界島と,比較対照のために南の波照間島を調査地として,氷期(2~7万年前および13~15万年前)と間氷期(8~12万年前)の化石サンゴ礁に注目して,サンゴ種の分布調査を行った. 研究初年度は,主に喜界島に分布する氷期の化石サンゴ礁について,露頭(石灰岩の露出する崖)およびボーリング掘削試料を用いて基本的な石灰岩の記載と化石サンゴ種の調査を行った.その結果,現在の喜界島周辺に多く分布するミドリイシ属が少なく,キクメイシ科が主体を成すことが明らかになった.今後はデータを増やすと共に,その質や数量的な評価を行う. 一方,波照間島では既報論文を参照しながら,間氷期サンゴ礁の分布状況の調査を行い,化石サンゴ種の調査地点を決定した.露頭の状況・数ともに十分で,概観したところハマサンゴ属が多い特徴がある. 本研究で問題になるのが,調査地点(露頭)数や化石の保存状態(石灰岩の溶食とセメント作用で化石の観察・同定が難しい)である.本年度はボーリング掘削を行い,保存状態の良いサンゴ化石を含む柱状試料を得ることができて,掘削調査の有効性が確かめられた.
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