研究概要 |
現在,日本には琉球列島を中心に約400種の造礁サンゴが分布し,その数は北に向かって減少する.そして緯度ごとにその種類と構成も異なる.しかし,この地理的分布がどの様に成立したのか,そのプロセスは十分に解明されていない.本研究は,サンゴ礁分布の北限域近くに位置する喜界島を調査地として『氷期-間氷期の気候変動に対応して,造礁サンゴの地理的分布に変化があったのか否か?』を明らかにすることを目指す.本来なら海面下に沈んでいるはずの氷期(4~7万年前および13~15万年前)の化石サンゴ礁が活発な隆起運動によって地表に露出している喜界島において,氷期のサンゴ群集調査を行った. 研究最終年である平成23年度は,これまで得られた成果を補強するために,引き続き露頭観察・スケッチとボーリング掘削(3地点で合計12.17mのコア試料を回収)を行った.その結果,本研究全体を通して以下のような成果が得られた. ・約14万年前(一つ前の氷期最盛期)にも喜界島にはサンゴ礁が形成されていた.これまで氷期最盛期には北緯28度付近でサンゴ礁が形成されなかった可能性が指摘されていたが,その仮説を覆す成果である. ・喜界島に分布する氷期の造礁サンゴには,現在の温帯域に特徴的にみられる種類(温帯タイプ)が含まれている.これは「氷期-間氷期の気候変動に対応して,造礁サンゴの地理的分布に変化があった」ことを示す成果といえる. ・氷期のサンゴ礁のうち,5万年,5.4万年,6万年前の化石サンゴ群集を比較すると,温帯タイプの割合が異なることが明らかになった.これは,数千年オーダーの気候変動に対応してサンゴ群集が変化した可能性を示唆する.この様な変化をさらに詳細に検討するために,今後,より高精度の年代測定を実施する予定である.
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